Movies (2025年7月6日号)
Private Life
プライベート・ライフ
CAST & STAFF
特定のテーマを深堀り
あらすじ リチャードとレイチェルは不妊治療に取り組む40代の夫婦。長い間あらゆる手段を試してきましたが思うような結果が出ず、選択肢は狭まっていく一方です。費用もかさみ、精神的にも疲弊し始めます。そんな矢先、義理のめいのセイディが居候することになり、夫婦は意を決して彼女に卵子提供を頼むのですが……。2人の葛藤の日々を、夫婦のあり方も真摯(しんし)に見つめながら、時にユーモアも交えて描きます。 場面説明 シーン1では、リチャードとレイチェルがクリニックで新たな不妊治療法を提案され、高い追加費用に戸惑います。シーン2では、リチャードの兄チャーリーが、弟から治療費援助を頼まれたと妻のシンシアに伝えます。シーン3は、レイチェルが友人のキャロラインと体外受精について話す場面です。シーン4では、クリニックで卵子提供による治療をすすめられた後、それにやや乗り気のリチャードにレイチェルが憤ります。
不妊治療は、肉体的、精神的、経済的な負担が大きく、極めてデリケートな問題です。「妊活」を描いた本作は、コミカルな要素こそ多々ありますが、ときおり重い展開になるのは否めません。一方、普段の英語学習では出合えない言葉に触れる良い機会にもなりそうです。 シーン3に出てくる IVF(体外受精)は “in vitro fertilization” の略で、“in vitro” はラテン語で「ガラス(試験管)の中」という意味。かつて体外受精で生まれた赤ん坊は「試験管ベビー(test-tube baby)」と呼ばれていました。シーン4の “egg donation”(卵子提供)は、日本では厳しい倫理的・法的規制があるようです。「不妊治療」は英語で “fertility treatment”。「妊活」は “Trying to conceive” が一般的で、TTC という略語もよく使われます。 本作では、妻が “The lie that I could have a career and then kids.”(キャリアも子どもも持てるというウソ)を嘆き、夫が “you kept changing the deadline.”(先延ばしにしてきたからだろ)と返す、理想と現実のギャップを突くシーンもあります。もっとも、不妊治療を選ぶ事情は人それぞれ。タイトルの Private Life はこのテーマを的確に表していると言えるでしょう。 (中俣真知子 翻訳家)
Richard, we don’t have $10,000.
リチャード、1万ドルなんてないわ。
I know. I’m gonna call Charlie.
分かってる。チャーリーに電話するよ。
I thought we weren’t gonna tell anybody.
誰にも話さないって思ってたのに。
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